翌朝。
かなり早い時間に燭台切は起こされた。そろりとこちらをのぞき込むようにして戸を開けた雫石の声は新鮮なものだった。いつも、二人とも勝手に起きるというのに、起こされるとは。
なんとか酒は残らなかったらしい。
あわただしく朝食を終え、昨日買ったばかりのつなぎを着る。廊下にでれば熊谷がおり、「こっち」と燭台切を先導した。
母屋から少し行ったところに現場事務所のような建物があり――そこに、20人ほど人がいた。空気はまだひんやりとしている。
「第一次産業部門の人たち」
と先に着ていた雫石の隣に並べば彼女がそっと言った。
「第一次?」
「実際に畑とか田んぼで仕事する人たち。あとは加工部門があるの」
「加工」
「お米とか野菜そのままでも売るんだけどね、加工食品も作ってるの」
そこへ、シッという音がした。見れば、黒いつなぎを着た竜太郎であった。黒もあったのか――と思っていると、にらまれた。
「静かにしろ」
「ごめんってば」
従弟の物言いに雫石はいささかムッとしたようだった。
「えー昨日の進捗だが、第一区画がやや遅れている。また苗が不足しそうなときは逐次本部へ連絡をいれるように。係のものがいなくても勝手にもっていかないこと! 記録を残すこと!」
はい、と応えがあがる。前で喋っているのは針生アグリの社長である竜太郎の父で雫石の叔父だと、都子が小声で言った。その傍らに会長たる彼女の祖父が椅子に座っている。
では各班から報告、と竜太郎の父が言うと、いくつか手が挙がった。
「肥料散布用のドローンですが、一機不調です」
「またか。システム係に持ってけ」
「はい」
「K社との開発研究班です。無人のドラム型自動田植機ですが、リモコンとの連携の問題と、やはり泥の粘度との相性の問題が――」
「うん」
次々に報告があげられ、社長はそれに的確な指示を出しているようだった。
そして最後に
「では本日も! 無事故で! 作業をいたしましょう!」
と社長が言うと、おー、と声が上がった。それから人々は三々五々散り、中には軽トラックに乗り込んで出発する者もいた。
軽トラックの車列を見送っていると、
「おい」
と低く太い声がした。見れば、残っていた会長こと雫石たちの祖父が立ち上がってこちらを見ていた。
「都子、佐智子、お前たちはこっちだ」
その言葉に姉妹は昨日買った帽子を被り、祖父について行った。その後ろに、竜太郎も。
「俺らも行きましょうか」
熊谷ののんびりとした声に燭台切は頷き、列の最後尾に付いた。
たどり着いたのは、母屋のすぐ近くのやや日のあたりの悪い田んぼだった。げこげこ、とどこかから蛙の声がする。
「自分らの食い扶持は、自分で」
「はーい」
祖父の言葉に姉妹が同時に返事をした。
「竜太郎、田植機やってやれ」
「わかってる」
言って竜太郎はこちらを向いている小屋に向かっていった。大きなドアはとっくに開け放たれていて、そこには大きなトラクターと、燭台切には珍妙に見える車があった。むき出しの運転席の両脇には、すでに苗がいくらか乗っている。
「お前らはナエバコ持ってこい」
「はーい」
祖父の指示にまたしても姉妹は同時に返事をした。
歩き出した姉妹が、それぞれの連れを手招きした。
姉妹は背の高い男二人を引き連れて、竜太郎が乗り込んだ珍妙な車――田植機の横を抜ける。彼は真剣な顔でシフトレバーを引き、あたりを確認するとアクセルを踏んだ。燭台切が出発したそれを思わず振り返れば、機械の背後は傾斜になっており、地面に近い部分には不思議な爪がついているようだった。
「傾斜になっているところに苗を乗せて、あの下に付いてる“手”で植えるのよ」
「へえ」
「200年くらい進化してないのよね、あれ。……朝礼で無人型って話でてたでしょ? あれ、いまうちと開発会社で共同開発中なの」
「そうなんだ。とくっに無人型になってるものだと」
「泥がね、やっかいなの。ハンドルとアクセルから伝わる感覚を上手く数値化できないらしくて。田んぼの中でも泥っていろいろでしょう?」
「成る程」
――わかったような、わからないような。
雫石は燭台切のあいまいな表情を読みとったらしく、笑った。
「はーやーくー」
遠くで佐智子が二人を呼んだ。

連れてこられたのはビニールハウスだった。ハウスの中は苗の緑で満ちていた。みずみずしく力強い、緑。そして気温はやや蒸すほどだ。
中に二人ほど男がいて、おやお嬢さんがた、と笑う。
「雫石の家の分、あります?」
「あるよー」
言って男の一人が手招きする。ビニールハウスの奥の一角に進むと、そこには他とは区分けされた苗があった。日が当たるようにだろうか、棚のようなものの中では育てられておらず地面に広がるように整然と並んでいる。
もう一人の男が遅れてやってくる。――大きな棚のついた自走式のロボットを連れて。
燭台切がきょとんとする間に、熊谷が男たちと働き始めた。地面から苗を育苗箱ごと持ち上げると、ロボットが差し出した棚にそれを乗せていく。燭台切もさすがに勘づいて、あわててその作業に加わった。姉妹は乗せられた苗の状態を確認し、育苗箱の数を数えていく。
やがて積み込みが終わると、ロボットがホログラムを展開した。105、という数字と計算があったことにほっとする姉妹を尻目に、男の一人がそれを手元の端末に声でもって入力・記録した。
「足りるかなぁ」
熊谷ののんびりした声に
「ま、足りなかったらまた来てね」
と男たちが笑った。
ここは苗を育てる専用のハウスなのだという。

とろとろとロボットが一行の後に付いてくる。どうも追尾システムがあるようだ。来た道を戻ると、竜太郎の田植機が待ちかまえていた。
ロボットはそこへ近づき、棚から器用に田植機へ苗を移していく。
それから田植機が満杯になると、ロボットは畦の片隅に待機する。
竜太郎はそれを確認すると、畦から田んぼへ作られた坂道の入り口を下った。ハンドルを見事に操るその顔はなんとも男らしく、燭台切はへぇ、と感心してしまった。
「……それで、僕たちはこれから?」
傍らにいる雫石にきけば、彼女はにっこりとした。
「田植機だと植えられない角とか端、それから田植機の爪が上手く植えられなくて浮いちゃった苗をなおしていくの」
「へえ。……もしかしてこれも数値化できないことなのかな」
「ご明察」
さあ、入りましょ、と田植機が遠ざかったところで雫石は燭台切の手を引いた。
「ここの田んぼの分が、私たちが食べる分なの。日陰育ちは売り物にしないから」
「そういうことか。よし、頑張ろう」
長靴を履いた足を田んぼに入れて、燭台切は初めての泥の抵抗と水の冷たさにいささか驚いた。

――中腰の作業はつらいな……。
腰を屈めて行う作業に燭台切が何度目かの伸びをしたときだった。
「兄ちゃんは足が長いから、きついなや」
と畦から声がした。見れば、見回りにいってくると言ってどこかへ行ってしまった雫石の祖父が戻ってきていた。そして、ざぶん、という感じで田んぼに入ってくる。そして若者たちが直したはずの苗を整えていく。
「おじいちゃん、俺もきついよ」
「くまさんは太りすぎだぁ」
訛りの強い言葉で返されて、熊谷は笑った。
一番年かさ――付喪神の年齢を無視すれば――な老人の動きが一番早く、燭台切は見入ってしまう。彼など、先ほど泥から足が抜けなくなって雫石の肩を借りてしまったのだ。
「じいちゃん、俺、二枚目いくよー」
と竜太郎の声に祖父は
「行け」
と大きく答えたが、姿勢は田と向き合ったままだった。
竜太郎の乗る機械は入ったときとは別の坂から畦にあがり、隣の田んぼに入っていく。二枚目、というのは次の田んぼのことだったらしい。
「手動かせ、手」
見とれるような若者の視線に気づいた老人が鋭い口調で言ってきて、燭台切はあわてて田んぼと向き合った。
そうこうするうち、腹が減ってきた。
「ん、休憩か」
すいと老人の背が伸びる。
「……誰も来ねなぁ」
「叔母さん、みんなの方が忙しいだろうしねぇ」
「ばばあはどうした」
「いやばあちゃんだって叔母さん手伝ってるでしょ」
祖父と佐智子のやりとりは遠慮がない。
――自分の妻をばばあって。
ある程度方言的なものはあるのだろうが、燭台切は面食らってしまう。
「……私がとってきてあげる」
言ったのは雫石の長女だった。
「しょ……ミツタダ、手伝って」
「あ、うん」
言って楽々と田んぼを抜けていく主に近侍は付いていけない。なにしろ、植えたばかりの苗にも気をつけなければいけないのだ。
畦に上りかけていた雫石が近侍の苦闘に気づいて戻ってきて、その手を引っ張る。燭台切は上半身を主に任せて、泥から足を抜くのに神経を集中した。
「これ、かっこわるいなぁ……」
「初心者だからしゃーない」
ゆっくりとした歩みを、祖父と従弟は複雑そうに、妹たちは楽しげに見守っていた。


泥で重くなった長靴を引きずるようにしながら、母屋への道をたどる。
しかし雫石が向かったのは朝に集まった事務所のような建物だった。
からりと玄関の戸を引いてのぞき込めば、事務員らしい女性たちがばたばたと動き回っている。
「それ、第二区画のね」
「こっち取りに来てないわ」
「あとは――」
立ち働く女性たちの手にはペットボトルやら菓子やらが乗っている。采配を振るっている女性は二人。ひとりは歳をとりつつも姉妹とよく似ていて、容易に祖母だと察せられた。
「お昼まで体力持たないでしょ、力仕事だから。だからうちは10時と15時におやつの時間を入れてるの」
「……こういうのは、相変わらず女性の仕事なんだねぇ」
「ジェンダーってムズカシいわね」
雫石は肩をすくめた。立ち働いているのは女性ばかりで、男性事務員らしき人々はモニターを睨みつけているか、なんとか女性たちを手伝おうとして逆に邪険にされているかのどちらかであった。
「あら、都子ちゃん」
采配を振るっているうち、若い方の女性が声を上げた。
「叔母さん、裏の分ある?」
「あるある。じいちゃんそっちにいる?」
「いるいる」
そう言って二人は笑い会う。叔母ということは竜太郎の母なのだろう。それから社長夫人はすいと燭台切に目を当てた。
「……それじゃ、彼があれね」
「あれって何」
叔母という女性に目配せされて燭台切は笑い、雫石は眉を寄せて見せた。
その間に、祖母が袋を一つもって近寄ってくる。
「はい、裏の分」
「ありがとう、ばあちゃん」
礼を言う主より先に手を出した燭台切に、ちょっとびっくりしつつ祖母は荷物を持たせた。袋はずっしりと重い。
「まーあ、こんなとこまでよくござったなぁ」
受け取った青年をじっくりと見た後、祖母はにっこり笑ってそう言った。
祖母は「こんな遠くまでよくいらっしゃいましたね」と言ってきたのだ。懐かしい響きの言葉に燭台切はにっこりする。
「楽しい旅でしたよ」
「あらー、おらいの言葉わかんのすかや」
「もちろん」
祖母の言葉は燭台切にとっても耳に懐かしいものであった。だが、すべらかに彼の口からは出たのは標準語――東京弁で、時の隔たりを彼は思う。大倶利伽羅の顛末のときでた「ごしゃがれた」は単語だからこそ飛び出たのか、それとも精神世界だったからなのか。燭台切はそんな自分がいささか寂しく感じた。
しかし寂しさの向こうからなにやら視線を感じてふと辺りを見回せば、女子職員たちがみなこちらを見ていた。
中には燭台切と目が合うときゃあと声を上げるものもいた。
「……芸能人じゃないんだから」
「んだども、なかなか居ねからなぁ、こーんないい男」
あきれる雫石に対し、ころころと笑う祖母はかわいらしい。叔母も楽しげだ。
「竜太郎、これでやーっと諦めるかしら」
「叔母さん、それ竜が幼稚園の時の話よね? 高校のとき彼女いたでしょ」
「あら、知らないわ、初耳」
「……しまったかも」
「都子ちゃん、早くもどらねと、ずんつぁんへそ曲げるー」
「それはまずい」
言うが早いか雫石は燭台切のつなぎの肘のあたりをつかむと
「戻ろう」
と足早に歩き始めた。
引っ張られながら作業場を出たところで、
「都子ちゃん、やっといい人連れてきたのね」
と言い合う声が付喪の耳に届いた。

「持つ?」
「ぜんぜん大丈夫だよ」
差し出された手を紳士に断りつつ、来た道を三度。
「……さっきの竜太郎くんの話、なにかな」
「え?」
「やっと諦めるってやつ」
ああ、と雫石は笑った。
「従姉弟同士って法律上結婚できるでしょ? それ」
「それって」
「でも向こうが幼稚園、私が小学生の時の話よ。都子ちゃんと結婚するーって。可愛かったのよ」
「……」
燭台切はやっと竜太郎に邪険な態度をとられた意味を悟った。
確かに今となっては過去の話かもしれないが、ミヤコが竜太郎の初恋相手であることは間違いないのだろう。
――そうするとまあ、面白くはないか。
と燭台切は結論づけた。理由が分かれば、たぶんどうということはない。
戻れば、畦にみなが腰掛けていた。
躊躇なく地に腰を下ろす人々に戸惑いながら、燭台切もそれに倣う。座ったのは雫石のとなりで、一番端だ。
地面に置いた袋を雫石がごそごそあさり、
「お茶がいい人」
と希望を聞いて渡していく。
「炭酸」
そうぶっきらぼうに言ったのは竜太郎だった。
祖父、竜太郎、妹の佐智子、熊谷、雫石、燭台切。
飲み物は端から巡る。
自分の番になると、雫石は二本のペットボトルを燭台切の前に差し出した。
「どっちがいい?」
並ぶのは、ブラックティーと炭酸水。サイダーではなくソーダだ。
お茶の類を雫石が好むのを、燭台切はここ数ヶ月で覚えたし、自分はソーダも嫌いではない。なので、ソーダを手とると、彼女はひそかに嬉しそうにした。
風がそよぎ、若い苗を撫で、どこかへと去っていく。空は高く、水の気配。
「……そういえば」
そこに声を混ぜたのは燭台切だった。
「こちらから送られた野菜もいただいたことあるんですが、美味しくて。なにか秘訣があるんですか」
その言葉に雫石から向こうのものが一斉に祖父の方をみた。
「……都子のところに届いてるのなら、ばばの育てたやつだなぁ」
祖父はかじっていた饅頭を一つ飲み込むと、田を見たまま言った。
「化学系の肥料や農薬は使ってねぇからな。有機農法ってやつだ」
祖父の言葉を竜太郎が引き継いだ。
「あとハーブ。一緒に植えてるんだ、ばあちゃん」
「ハーブ?」
「コンパニオンプランツ……、共栄作物ってやつだ」
「コンパニオンプランツ……?」
そこで竜太郎は燭台切と口を聞いてしまったことにはっとしたような顔をして、ペットボトルを傾けて押し黙った。
雫石が隣で苦笑した。
「メインの野菜と相性のいいハーブを一緒に植えてあげると、相互作用でよく育つの。虫がこなかったり、土を柔らかくしたり」
「へぇ!」
「気になるなら、あとでばあちゃんに組み合わせとか聞いてみて」
「いいのかな」
「喜ぶと思う」
その言葉を受けて、佐智子がふと気づいたように祖父のほうへ乗り出した。
「会社のほうでは、有機やってないよね?」
「人を雇ってんだから、化学肥料つかわねぇと給料出せねぇべ」
化学と有機は思想的にも農法的にも未だ対局にあるともいえる手法のようだ。
化学農法は自然に育てていたのでは得られない栄養を化学的に与え、予想しうる害を人の手による化学で退ける。そのかわりに化学系農薬などが人や大地に害を与えてきた事実もある。有機は化学的な物質を使わない代わりに古典的な肥料や農薬を使い、作物そのものや人に比較的自然にない変化を与えない。そのため作物や環境、人への負荷は少ないが、化学ほど不測の事態に強くはない。
雫石の祖父が言うのはそれだろう。
有機は人が好み、ひとつの値は高くなるが収穫量は化学を取り込んだ農法に追いつけない。それでは人を雇うことができないのだ、彼は言いたいのだ。
大量消費社会への反省は行われても、いまだ社会は「もっと」と声を上げるのだ。
「俺が会社に入ったら、有機のブランド立ち上げる」
竜太郎が言った。
「それから徐々に切り替えて、人も雇えるようにしてぇな」
「ま、やってみろ」
祖父はこだわるでもなく静かに孫の一人へそう言った。
――燭台切はその夜、竜太郎が農学部でそのような勉強をしていると知った。

「――明日はそっち手伝えそう」
夕食時、雫石の母がそう言った。会社員として担当していた区画の作業が終わったらしい。
「それから、明日の夜は母屋のほうでバーベキューしようって。光忠くんもいるしっておばあちゃんが」
「光栄です」
今日の夕食はチャーハンに野菜炒め。
早くも筋肉痛が出つつある燭台切は夕食の準備を手伝うことができなかった。
「……お母さんとお父さんがうちの分の田んぼやってくれるなら、明日しょくだ…………、ミツタダを町案内してきてもいい?」
「いいけど、町って言ってもお屋敷ぐらいしか見るものないんじゃないか?」
父の言葉に佐智子が答える。
「お姉ちゃんには、あるのよ」
「……ああ」
熊谷が気づいたように言った。それから、父母も遅れて気づいたようだった。
「そうね、いってらっしゃい。でも、そのかわりお昼は用意してくれると助かるわ」
「それだったら、僕も手伝います!」
燭台切が不意に嬉しそうな声を上げたことに雫石家が長女を除いて目をぱちくりさせた。
「ああ、ええと、彼、料理得意なの」
「へぇー」
と四人が感心したような声を上げる。
「何か食べたいもの、ある? 彼なんでも得意だから」
ここ数ヶ月で燭台切のレパートリーは恐ろしく増えた。和食、洋食、中華。
「あ、パスタ食べたい」
と言ったのは佐智子である。燭台切はにっこり笑った。
「ソースとか麺のご希望はあるかな?」
「とくに。小麦粉の麺が食べたいなぁって。でもラーメンじゃないなって」
「オーケー、お任せを。人数は?」
燭台切の質問に、母親が遠慮がちに言った。
「うちの両親と、それから弟一家にも作ってくれるとうれしいわ。いつも弟のお嫁さんに頼んでるんだけど、従業員のおやつの準備もしてるし、大変そうで」
「弟一家、っていうと、竜太郎の両親と、竜太郎と下に妹が二人いるの。妹たちはまだ高校生だから、田んぼは手伝ってないけどお母さんの手伝いはしてるから」
「いちにいさん、……十三人かな」
「そうなるわね」
「腕のふるいがいがありそうだ」
と燭台切は笑った。
「そうだ、コンパニオンプランツ、興味あるのよね? 田んぼにでる前にばあちゃん世話してるから、朝起きたら見に行きましょ」
雫石の言葉に燭台切は一も二もなく頷いた。

[初出]2017年1月30日